ze とは
ze は特殊な形式名詞であり、記述詞や修飾節で修飾されて名詞句を作る。ze には、自身が被修飾語となる形式名詞としての用法と、修飾節内での被修飾語(一般名詞)の格を示す格標識としての用法がある。形式名詞としての用法は英語の that の接続詞用法(that 節)に、格標識としての用法は関係詞の用法に似た用い方をされる。
修飾節そのものの構造は文・節・句を参照のこと。
ze の格変化
ze は次の表に従って格変化する。格変化は必須要素ではなく、格を明示したい場合のみ現れる。
| 格 | 表記 | 対応する日本語助詞 (厳密には意味が異なる場合がある) |
|---|---|---|
| 格無し | ze | ー |
| 主格 | zef | は、が |
| 属格 | zis | の(所有) |
| 対格 | zu | を |
| 与格 | zeni | に、へ(目的地) |
| 奪格 | zehur | (人、物)から |
| 出格 | zur | (場所、時間)から |
| 処格 | zera | (場所、時間)で |
| 向格 | zenir | の方向へ |
| 経由格 | zedi | (場所)を通って、(期間)を通じて |
| 具格 | zedu | (手段)で |
| 駆動格 | zetim | (人、物、事)の目的で、(人、物、事)が原因で |
| 使役格 | zior | (人)によって |
主要格と場所・時間表現の格を用いることが多く、駆動格や使役格は殆ど使用することがない。
形式名詞としての ze
被修飾語が ze の場合は「~こと」「~もの」を表す。”Ze dirin”「赤いこと」のように通常の記述詞で修飾するものと、”Ze mirdeivetra n”「生きていること」のように修飾節で修飾するものがある。長い修飾節で修飾することもできる。”Ze ardira renkeu koe n”「昨日リンゴを食べたこと」、”Ze ref 2-iri-behra varu guvancoskittera n”「私が2年前に車を買い替えたこと」などが挙げられる。
被修飾語が ze の場合は、ze は自身の格に従って格変化する。例えば、“Zef reu deve n”「私を好きな何か」では ze が主語である。格変化させない場合、”Ze reu deve n” は「私を好きであるということ」とも「私のことを好きな人または物」とも解釈でき、どちらであるかは文脈による。
格標識としての ze
被修飾語が一般名詞の場合は、格変化した ze を被修飾語の直後に置くことで、修飾節内での被修飾語の格を明示することができる。例えば、”Fom zef reu deve n”「私を好きな人」では、ze は被修飾語の格を表示するためだけの形式名詞であり、被修飾語 fom とは同格関係にあると解釈される。イジェール語では通常、名詞を連続させることによる同格関係は作らないため、これは例外的な運用となっている。
被修飾語が一般名詞のときに ze を伴っていた場合、被修飾語を省略して ze を形式名詞として被修飾語の位置に置くこともできる。”Fom zef reu deve n” から fom を省略すると ”Zef reu deve n” となる。この場合、被修飾語は ze 自身となる。zef などで格を明示しておけば、被修飾語を省略しても意味が通じやすい。
格無しの ze
格標識として一般名詞の直後に置く格無しの ze は、修飾節内での被修飾語の格を示さない。”Renke (ze) ref koe n”「私が食べたりんご」のように、単に本来の格変化である zu を省略して ze としている場合の他、”heura (ze) skeniu ubade n”「魚を焼くにおい」のように、修飾節内で被修飾語との格関係が成り立たない場合にも用いられる(属格と記述詞を参照)。
例
- Ze edoke icen in ef saguan.|美しく歩く事は良い。
- Zef edoke icen in ef icen.|美しく歩く(人)は美しい。
- Fom zef edoke icen in ef icen.|美しく歩く人は美しい。
- Renke zu ref koe n ef dirin.|私が食べたりんごは赤い。
- Renke ze ref koe n ef dirin.|私が食べたりんごは赤い。(zu を省略して格無しの ze としている。)
- Zu cokef koetra n ef seven?|お父さんが食べてるものは何?
- Venu zu cokef koetra n ef seven?|お父さんが食べてるものは何?
- Ref zu naraf reeke n u reeke.|私は貴方が好むものが好きだ。(reekeの動作主がnaraであり、修飾されるのは「好まれる」客体である。)
- Ref zef mare n u sedoetra.|私は目撃者(見た人)を知っている。(mareで修飾されるのは「見る」主体である。)
- Ref zetim s’af mirigare n u ture tein.|私は彼が生きる目的を奪いたい。
- Mac zera irbae n ra, reu kude.|助けが必要なときはいつでも呼んで。