「虐殺器官」読了・紹介
- 2014年03月31日
- 書評
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【虐殺器官:伊藤計劃 著】を読み終わった.
ネタバレにならない範囲であらすじを述べておく.この小説は,アメリカ情報軍所属の特殊部隊員である主人公,クラヴィス・シェパード大尉が世界中の虐殺を先導して回る「ジョン・ポール」なる人物を追いながら,その真意に迫っていく物語だ.
物語の道具としては,サピアウォーフの仮説をはじめとした言語の本能に纏わる話,進化と良心や虐殺や倫理観に纏わる話,脳や意識は決して一枚岩ではなくモジュールが連合して動いているのだという話が用いられる.利己的遺伝子についての話を知っていると,理解の助けになるだろう.
自分には,最初この話は2つの主題があるように見えた.ひとつは,クラヴィス大尉が思い悩む「死者の国」についての話で,もうひとつはジョン・ポールを中心とした虐殺と進化についての話だ.でも,この2つの物語は後半で交錯して来る.そして,そこから最後に至る展開は怒涛としか言えない.
とても面白い話だった.