文字と発音
- 初版:2013年09月29日
- 更新:2023年05月03日
文字
イジェール語の表記には、5母音15子音からなるイジェール文字を用いる。
イジェール文字には大文字と小文字があるが、大文字が用いられることはほとんどない。大文字が用いられるのは
- 文の頭文字
- 文章中の強調
- 接続詞を除く、固有名詞句の各単語の語頭
- 略語
等である。書籍や映画のタイトルは、固有名詞と同様に表記する。いずれの用法も外国語の影響によるもので、本来のイジェール文字にはなかった用法である。
HKS順
母音を上段に、子音を下段3段にわたって表記するのが正式な文字順序である。この順序はmakudi HKSn (hekesen)と呼ばれる。表記の都合で一列に表示される場合はeaoiuhkstcnrmpfgzdbvで表される。なお、辞書順としては変音記号が無視されるため、teh、t’ek、tesは左記の順に並ぶ。
文字表と代用表記
一般的に用いられる文字表は、このような順序で表記される。上が大文字で、下が小文字である。
代用表記を下に併記する。
e | a | o | i | u |
h | k | s | t | c |
n | r | m | p | f |
g | z | d | b | v |
cはツァ行の転写記号としているので、注意が必要である。
また、ダイアクリティカルマークの「’」は変音記号と呼ばれており、特定の子音について発音を変化させる。s, t, c, n, z, dは調音点が後退し、rだけは巻き舌のrに変化する。変音記号付き文字は通常リスト化されないが、表にすると以下のようになる。
s’ | t’ | n’ | r’ | z’ | d’ |
近年では母音に付く場合もある。母音に変音記号が付く場合、その音節にアクセントが移動する。この表記法は特に外来語の表記に用いられる。
文字と発音
音素表記上で大文字・小文字の差が音声の差を表すことはない。なので、アクセント位置の母音を大文字にして示すことがある。子音の中には有気音であるとの記載があるものがあるが、イジェール語では有気音か無気音かは弁別性を持たない。強勢がある母音の直前の子音は有気音として発音されるが、それ以外の子音は全て無気音として発音されるのが普通である。
文字 | 文字名称 | 読み(文字名称) | 標準音価(IPA) | 音素表記 | 発音上の注意 |
e | e | エー | [ɛ][e̞] | /e/ | 日本語のエよりアに近い。強勢が無い場所では日本語と同じ。 |
a | a | アー | [a] | /a/ | |
o | o | オー | [ɔ][o̞] | /o/ | 日本語のオより口の奥をを丸く開く。強勢が無い場所では日本語と同じ。 |
i | i | イー | [i] | /i/ | 日本語のイよりも口を平たくする。 |
u | u | ウー | [u] | /u/ | 日本語のウよりも唇を丸めて突き出す。 |
h | he | ヘー | [x] | /h/ | 喉の奥を接近させてから開放して出す「ハ」。 |
k | ke | ケー | [kʰ][k] | /k/ | 強勢がある場合、子音を発音してから母音を発音するまで溜めがある(有気音)。 |
s | es | エス | [s] | /s/ | |
t | te | テー | [tʰ][t] | /t/ | 強勢がある場合、子音を発音してから母音を発音するまで溜めがある(有気音)。 |
c | ce | ツェー | [t͡sʰ][t͡s] | /c/ | 強勢がある場合、子音を発音してから母音を発音するまで溜めがある(有気音)。 |
n | ne | ネー | [n] | /n/ | |
r | er | エル | [ɾ] | /r/ | 日本語のラ行と同じ。 |
m | em | エム | [m] | /m/ | |
p | pe | ペー | [pʰ][p] | /p/ | 強勢がある場合、子音を発音してから母音を発音するまで溜めがある(有気音)。 |
f | fe | フェー | [f] | /f/ | |
g | ge | ゲー | [g] | /g/ | |
z | ze | ゼー | [z] | /z/ | |
d | de | デー | [d] | /d/ | |
b | be | ベー | [b] | /b/ | |
v | ve | ヴェー | [v] | /v/ | |
t’ | t’e | チェー | [t͡ʃʰ][t͡ʃ] | /t’/ | 文字名称はt cienzin(変音t)ということもある。 |
s’ | s’e | シェー | [ʃ] | /s’/ | t’同様にs cienzinとも。以下同様。 |
n’ | n’e | ニェー | [ɲ] | /n’/ | |
r’ | er’ | エル | [r] | /r’/ | 巻き舌のr。 |
d’ | d’e | ヂェー | [d͡ʒ] | /d’/ | ジャ行が語頭に来たときの子音と同じ。舌を上顎につけて、一旦閉鎖する破擦音。 |
z’ | z’e | ジェー | [ʒ] | /z’/ | ジャ行が母音に挟まれた時の子音と同じ。舌は上顎につかず、空気が抜ける音がする摩擦音。 |
[j] | /y/ | ヤ行の子音。半母音扱いで、対応した文字はない。 | |||
[β̞] | /w/ | ワ行の子音。半母音扱いで、対応した文字はない。 |
半母音挿入
母音が連続した場合、半母音が挿入されることがある。これらの綴りでは(例え単語を隔てていたとしても)義務的に発生する。
綴り | 実際の発音 |
i+母音 | /iy/+母音 |
ii | /iwi/ |
u+母音 | /uw/+母音 |
aa | /awa/ |
oa | /owa/ |
oo | /owo/ |
以下はどちらかの母音に強勢がある場合のみの半母音挿入である。
e+母音 | /ew/+母音 |
例
品詞 | 単語 | 音素 | 発音 | 意味 |
記述詞 | akserin | /aksErin/ | アクセーリン | 戦いの |
名詞 | asderi | /asdEri/ | アスデーリ | 歴史 |
名詞句 | asderi akserin | /asEriyaksErin/ | アスデーリヤクセーリン | 戦いの歴史 |
名詞 | veesvedena | /veesvedEna/ | ヴェエスヴェデーナ | 衛星 |
名詞 | neer | /nEwer/ | ネーウェル | 夜 |
名詞句 | Ziranda Erdesan | /zirAndaerdEsan/ | ズィラーンダエルデーサン | ニュージーランド |