属格と記述詞
- 初版:2015年04月25日
- 更新:2023年08月02日
2つの属格について
イジェール語には名詞で名詞を修飾する表現がふたつある。属格(-is)は所有、所属、部分の意味を表す場合に用いるのが基本である。わかり易い例を挙げると
- 属格:res boga|私の本=私が所有する本
- 記述詞形:boga ren|私の本=私を書いた本、私が書いた本
という関係がある。
属格による動詞派生名詞の修飾
属格は主要格相当の単語として振る舞うことができ、記述詞形は主要格以外の格に相当する意味関係を持つ語として振る舞うことができる。例を挙げると
- 主格:ze ref vasiee = res vesie
私が願うこと=私の願い - 対格:ze bogau dare = bogas dar
本を読むこと=本の読み - 出格:ze afaveur akze = akz afaven
駅から出発すること=駅の出発 - 処格:ze kuvera afe = af kuven
ここで乗り換えること=ここの乗り換え
のようになる。日本語の「の」に対応する場合でも、表現方法が2種類あることに注意する必要がある。
記述詞形の曖昧性
記述詞形は上記の様に主要格以外の格としての振る舞いのほかに、語用論的推測による幅広い修飾に使うことができる。
- nati (zera) renkeu koe n
リンゴを買った日 - sadave (zera ref) koae n
買った店 - heura (ze) skeniu ubade n
魚を焼くにおい
前半ふたつの例は、英語的な関係節として解釈しても理解できる。しかし、最後の例は修飾節内と被修飾語の間には格関係が成り立たない。イジェール語においては、これは記述詞形による作用とされる。このことは、下の文章との対比で理解できる。
- mihico fanditaris devin
家族の愛の物語
mihico「話」と dev「愛」には直接の関係はないが、記述詞形の作用の結果、緩やかな関連性が示されている。これと同様のことが句に対して発生しているのが、前述の例ということになる。