よくある格の組み合わせ
- 初版:2014年02月13日
- 更新:2015年04月08日
イジェール語における格の位置づけ
イジェール語において,属格以外の格は動詞に対する位置づけを示している.故に,”States of America”のような属格を用いた名詞句は存在し得るが,”Present for you”のような名詞句は存在できない.
格の位置づけを正確に読み取るには,まず動詞の意味の中心がどこにあるのかを把握する必要がある.
動詞の意味
イジェール語において,動詞は殆どが状態遷移動詞である.対格で示す目的語をある状態に移行させることを,意味の中心としている.このため,日本語においては状態動詞であるものが行為動詞として扱われる例が非常に多い.
格の組み合わせは状態遷移動詞に対して
- 主格:状態を変化させる主体
- 対格:状態が変化するもの
- 与格:変化の結果の方向性
- 奪格:変化の元の状態
という組み合わせを取るのが普通である.移動動詞の場合は
- 対格:移動する主体
- 与格:目的地
- 出格:出発点
- 向格:目的の方向
を取る.
使役者と原因が一致しない動詞の場合(感謝する等)は
- 主格:使役者
- 対格:状態が変化するもの
- 具格:原因となる物事,物体
を取る.
実際の例
動詞afe「乗り換えさせる」を例に考える.afeは
- 主格:乗り換えさせる主体
- 対格:乗り換える人物,物体
- 与格:乗り換え先の交通機関
- 奪格:乗り換え元の交通機関
- 処格:乗り換える場所
- 出格:そもそもの出発地点
- 向格:最終的な目的地,方向
という格の組み合わせを取る.対格で示す目的語が人物を指示するのは,交通機関を乗り換えることで状態が変化するのは交通機関ではなく人だからである.
別の例として,gire「射出する」を例に取ると,
- 主格:射撃手,弾を発射する物体
- 対格:射出される物体
- 与格:目標物
- 具格:(主格が人の場合に)弾を射出する物体
という格の組み合わせを取る.この動詞の場合,対格に来るのは弾丸や矢などのプロジェクタイルである.緯語では人と物をあまり区別しないので,銃と銃士のどちらでも主格になることができる.このような動詞の場合,主格に人が来た時は道具を具格に取る傾向にある.
最後に,具格を取る例としてmere「感動する」を例示する.
- 主格:感動させる人,物事
- 対格:感動する人
- 具格:(主格が人の場合に)感動の原因となる物事や作品等
となる.gireの場合と同様に,主格に原因を置くこともできる.ある人のある行動が原因の場合には,主格で人を指示して,具格でその出来事を指示すれば良い.なお,主格に関係節を用いて,「AのBすること」という形で双方を指示することもできる.
主格,対格,与格,奪格までが意味に深くかかわる項であり,その他の項は付加的な内容である場合に付加的に付けることが多い.前述の例でも,乗り降りする交通機関は与格と奪格で指示している一方で,出格,処格,向格の3つが指示するのは動詞の動作に直接関係ない場所となっている.