「分析哲学講義」読了・紹介
- 2016年02月20日
- 書評
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【分析哲学講義:青山 拓央著】を読み終わった.以前から,ロジバン関係の話題で分析哲学や言語哲学についての話を目にすることが多かったため,分野としては気になっていた.しかし,この手の学問は入門書を探すのが難しく,どこから手を付けたものかと迷っていた.この本は,「分析哲学とは何か」から,現在もさかんに論じられるトピックについてをおおまかに知ることが出来る.個々の哲学者の詳細な意見にまでは触れられないが,基本的な考え方や,主要な哲学者の観点については十分に解説されている.
この本で触れられている分析哲学の主要トピックは,
- 「意味」とは何か
- 「心・意識」とは何か
- 「今」とは何か
の3点にまとめることができる.意味の話を突き詰めると言語哲学に接続していき,心の話を突き詰めると心の哲学に,今と時間に関する話を突き詰めると時間と時空の哲学に細分化していく.
自分のことを「理屈っぽい」と思う人には,おすすめできる本である.「哲学なんて馬鹿馬鹿しい,そんなものは不要だ」と考える人にも,一読の価値はあるかもしれない.哲学の価値についてコメントしたくなる人は,哲学に一歩足を踏み入れているからだ.「哲学なんてどうでもいい」と考える人よりは,哲学に近い位置に居るだろう.
科学に重きを置く人,特に工学よりも理論を研究する分野の科学者にとっても,これらの話題は重要であると思う.特に,「時間は過去から未来に向かって流れるものだ」という常識的な考え方が,数式や法則の解釈を誤らせる可能性については,心に留めておく必要がある.時間の話題ほど直接的ではなくとも,意味に関する諸問題は,科学において重視される再現性と連続している.一見対局に位置するように思われる哲学と科学だが,その領域は連続的につながっている.
巻末には参考文献や,本書の内容に興味を持った人が次に読むべき本についてまとめられている.入門書としては非常に良いものであると感じた.